その後、美咲と篤志は大翔を待たず空港を出た。
本来ならパイロットは着陸後のデブリーフィングを終えれば退勤となるが、エンジントラブルがあったのなら聞き取り調査などがあるだろうと篤志が教えてくれたため、予定を変更して先に帰宅することにしたのだ。
「え? お兄ちゃん、うちに寄っていかないの?」
「大翔はかなり疲れてるだろうし、今日は遠慮しておく。ふたりでゆっくりしろよ」
そう言って先にエレベーターを降りた篤志と別れたあと、大翔から【ごめん、トラブルがあって遅くなる】とメッセージが入った。
何時になるかはわからないけれど、美咲は【了解です】と返信して、通常の乗務勤務の日と同じように食事を作って待つことにした。
『私、大翔さんの乗務の日は、今日も無事に帰ってきてくれてありがとうって気持ちを込めて美味しいご飯を作って待ってますね』
普段からそうした思いでいるつもりだけど、今日ほど実感したことはない。
黙々と料理をして、それが終わると気持ちを落ち着かせるために長めにお風呂に入る。
そうして夕方六時を過ぎた頃、ようやく玄関の扉が開く音がした。美咲はパタパタとスリッパの音を鳴らして廊下を走る。



