声を掛けてきた山口は、四十代の女性チーフパーサー。よく気のつく彼女は機長からの信頼も厚く、大翔も頼りにしているクルーのひとりだ。
「キャプテンたちはどうされますか?」
山口がいるのならおかしな雰囲気にはならないだろうとわかっているが、女性との食事会への出席はどうしても慎重になる。
大翔が一緒に乗務していた長嶋と筒井に尋ねると、筒井が「申し訳ないが、今回はパスします。ぜひまたの機会に誘ってください」と頭を下げた。それに続き、長嶋も「僕も」と肩を竦めて笑った。
「実はウィーンには古い友人がいましてね、今夜は約束があるんです。各務くんの参加を期待しているCAさんには申し訳ないけれど」
「キャプテンが同席しないと各務さんが釣れないのは有名な話ですからね」
「……釣れないって。俺は魚ですか」
「でも素敵だと思いますよ。パートナーを不安にさせないように無闇に女性と行動しないようにしているんですよね。CAの中には、やはり将来有望なパイロットをゲットしたいと思っている子もいますから」
既婚者である山口は苦笑したあと、「あ、今日はそういう狙いを持った子はいないと思いますけど」と付け足した。



