会場をあとにすると、すぐさまタクシーで自宅へと向かう。
美咲は笑顔で送り出してくれたが、心の奥底には不安を抱えているかもしれない。そんな心境の彼女を長くひとりにしておきたくなくて、大翔は急いで帰宅した。
「ただいま。美咲?」
玄関からリビングへ向かうと、電気はついているもののしんと静まり返っている。
時刻は午後七時半。寝るには早すぎるし、キッチンを見るとひとりで食事をした形跡があるため、どこかに食べに行っているという線もない。
洗面所やトイレも真っ暗で、バスルームを覗いてみたが今日はまだ使用していないようだ。
大翔は美咲の私室のドアをノックし、そっと開けてみる。しかし部屋に明かりはついておらず、ベッドも空っぽだった。
彼女と気持ちを通わせて以降、寝室を一緒にしようと提案したものの、美咲は『大翔さんの睡眠の邪魔をしたくないので、これまで通り別々にしましょう』と断り、大翔の休みの前日以外は自室で眠っている。
それを寂しく感じていたが、パイロットという仕事に対する彼女なりの配慮なのだとわかるため受け入れていた。



