ふと長嶋の顔が脳裏に浮かんだ。彼は結婚を急かすようなことはないが、『仲人が必要ならおふたりで依頼にきてくださいね。各務くんの骨抜きになっている顔をもう一度間近で拝めるチャンスですから』などと言って大翔をからかっている節がある。
とはいえ目指すべきMFFパイロットの先輩として、なにかと気にかけてもらえるのはありがたい。
「佐伯と各務は結婚の予定ないのか? パイロットなら美人CAとか選び放題だろ」
美人CAに興味はないが、結婚の予定ならある。大翔が口を開こうとした時、入口付近のテーブルから場違いな甲高い笑い声が響いた。
理工学部はほとんどが男性で女性の割合は二割にも満たないため、会場内の女性は嫌でも目立つ。視線を向けると、佐奈がいるとすぐにわかった。
相変わらず派手好きなのか、体型を拾う真っ赤な細身のドレスを纏っている。
「あれ、北見か。今年は出席したんだ。すごいドレスだな」
「子持ちであのスタイルはすごいよな。離婚裁判でゴタゴタしてたのって去年だったか?」
周囲の友人たちの会話から佐奈の近況が聞こえてきたが、大翔はそっと視線を外した。どれだけ扇情的なドレスだろうと、サクラ航空をやめた後に彼女がどうしていようと、大翔には関係ないし微塵も興味がない。



