理香が指示を出すと、葛西と辻村はニヤニヤしながらも素直に仕事に取り掛かる。美咲は彼らの追求から逃れられたと小さく安堵のため息をつきつつ、理香とふたりで休憩に出た。
「それで? 本当はずっと好きだったんでしょ。なにがきっかけでヨリを戻そうって思ったの?」
食事をしながら、早速理香が水を向けてくる。辻村たちに言った『根掘り葉掘り聞いておく』というのは、咄嗟のごまかしではなかったらしい。
美咲はロコモコ丼を口に運び、咀嚼しながら「うーん」と首をかしげた。
きっかけと言えるほど、なにか大きな転機があったわけではない。けれど大翔の大きくて深い愛情を一身に浴びて、勝手に不安になって逃げていた自分が情けなくなった。
きちんと向き合わなくては誠実さに欠けると思ったし、現在の悠輔と美咲の関係性を考えれば、過去の大翔が今の自分と同じように思っていたのだろうと理解もできる。
身勝手な別れ方に対する罪悪感を取っ払って自分の感情と向き合ってみると、大翔を好きだという気持ちしか残らなかった。
過去を引きずっているわけではなく、今の大翔に惹かれているのだ。
美咲が言葉を選びながら話すのを最後まで黙って聞き終えた理香は、ふわりと綺麗に微笑んだ。



