すると、彼はふっと息を吐き出した。
「やっぱりそうなのか。ただの勘だったんだけど。付き合ってるの?」
「ううん。悠輔の家を出た日、本当に偶然再会したの。でも……告白しようと思ってる」
美咲が正直にそう打ち明けると、悠輔は少し驚いた表情を見せたあと、小さく笑った。
「そっか。俺が言うのもおこがましいけど、うまくいくといいな」
本心からそう言ってくれているのが伝わる。こういう穏やかな空気感を持つ悠輔だからこそ、美咲も結婚を考えられたのだ。
「うん。ありがとう」
「そろそろ行くわ。休憩中にごめんな」
「ううん、話せてよかったよ。私、ここで食べていくから」
「そっか。じゃあな」
今後ふたりきりで会うことは二度となくても、これからも悠輔とは会社の同期であり、同じ部署で働く同僚だ。仕事上では今まで通り接するために、こうしてわだかまりなく別れられてよかったと思う。
会議室から出ていく悠輔を見送り、ふうっと息をつく。
部屋の奥の大きな窓からは抜けるような青空と、悠然と飛んでいる一機の飛行機が見えた。飛行機を見るたびに、大翔の顔が思い浮かぶ。それは八年前からずっと変わらない。
(なんか今、すごく大翔さんに会いたい)
海の向こうにいる大翔を想い、きゅっと胸が詰まった。



