まだ正午になったばかりだからか、室内には誰もいなかった。美咲と悠輔は入口を入って右側の長机にマグカップを置き、ひとつ席をあけて並んで座る。
「今さらだけど、裏切るような真似をして本当にごめん」
「もう何度も謝ってもらったよ。それにあの日も言ったけど、私にも原因はあったと思う」
「いや、違う。美咲はちゃんと言ってたよ、恋愛には消極的だけど結婚はしたいって。俺、自分から告白して付き合ったのって美咲が初めてだったんだ。だから俺に恋愛感情を持っていない相手をどうやって振り向かせたらいいのかわからなくて、ずっと不安だった」
苦しそうに言葉を続ける悠輔を見つめた。きっとこうしてふたりきりで話すのは、今日が最後になる。それならば、なにもかも吐き出してしまった方がいい気がして、美咲は黙って続きを待った。
「結婚前提っていう条件があったから告白に頷いてくれたのもわかってたし、それでもいいと言ったのは俺だ。なのに勝手に不安に感じて、流されて裏切るなんて最低だった。ごめん」
「ううん。私も、悠輔が恋愛感情を持ったうえで告白してくれたんだってわかってたんだから、もっときちんと向き合うべきだった。ごめんなさい」
恋愛と結婚を分けて考えていた美咲と、『好きだ』と告白してくれた悠輔。長い時間を一緒に過ごしても彼に対する感情が〝恋〟にならなかった時点で、もう一度立ち止まって考えてみるべきだったのだ。



