すると、辻村が素っ頓狂な声を出す。
「えっ! なにをもったいぶってんですか。あんなイケメンパイロットが口説いてんのに? 佐伯マネ、理想高すぎっすよ」
もったいぶっているわけではない……と思う。
大翔がこれだけ意思表示をしてくれているのを、美咲も嬉しく感じている。今の関係性を進展させるには、美咲から一歩踏み出すしかない。
「辻村さん、失礼ですよ。女子としては、あそこまでモテる相手だとやっぱり警戒しますって」
「たしかに、あれは男から見てもめちゃくちゃハイスペだわー。この前も佐伯マネがいない日に来た時、『もし美咲に言い寄るような男がいたらこっそり教えて』って耳打ちされたし。客はもちろんだけど、俺らスタッフにも牽制してるって感じ?」
「えぇ! 初耳ですっ。めちゃくちゃ愛されてるじゃないですかー」
「……私も初耳なんだけど」
まさか大翔が辻村にそんな話をしていたなんて。恥ずかしいけれど、彼の独占欲を垣間見た気がして嬉しくなる。
「でも『まだ彼氏じゃない』ってことは、そのうち彼氏になるって意味ですよね?」
「ノーコメント。はい、仕事仕事。私注文とってくるから、ドリンクとレジはよろしく」
美咲はできるだけ平静を装いながら、ふたりに背を向けてオーダー待ちのテーブルへと向かった。



