そう言うと、長嶋がこちらに視線を向ける。
「ほう。それは興味深いですね。以前、北見キャプテンの娘さんと噂が立っていましたが」
「いえ。彼女とは単なる同期でした」
正直、佐奈のことは思い出したくもない。
無責任な退職に失望したのはもちろん、昨夜、美咲の話を聞き、嫌悪感は何倍にも膨れ上がった。
「おっと、それは失礼しました。では、足繁く通っているというカフェの彼女ですか?」
「……キャプテンは意外と噂話がお好きなんですね」
「いやいや、こういうのは勝手に耳に入ってくるものですよ」
くっくっと笑う長嶋は存外お茶目な性格をしているようだ。そんな彼を横目に、大翔がカフェで働く美咲の姿を思い出す。
店舗全体を見回し、困っているスタッフがいればすかさず助けに入る。誰にでも常に笑顔で対応し、接客も様になっていて立ち姿は凛としていて美しかった。
店舗の従業員にも慕われているようで、地道に努力し、エリアマネージャーとして地位を確立してきた自信が垣間見える。
そんな美咲を少しでも見たくて、出社した日はカランドに足が向いてしまうのだ。



