情けなさに打ちひしがれながら豪華なエントランス前のオートロックで兄の部屋番号を入力する。
けれど、呼び出しボタンの無機質な音が鳴ったきり反応がない。
「いないのかな……」
美咲はボタンの上に人差し指を乗せたまま、ざーざーと降る雨の音よりも小さな声で呟く。
なんだか、世界にひとりだけ取り残されたような孤独を感じた。
大好きだった両親はふたりとも旅立ってしまい、家族になろうとしていた恋人に裏切られ、頼りにしている兄は今日に限って留守。今夜寝る場所さえない。
(あ、これはダメな思考回路だ……)
両親との別れは過去の話だし、浮気されたのはショックだが世間一般的に珍しいことではない。兄の留守にいたっては仕事だろうから同列に並べるのもおかしな話だ。
ファミレスや漫画喫茶で夜を明かしたくないのなら、今すぐに駅前に引き返して片っ端からビジネスホテルを回り、空いている部屋を探すしか道はない。子供ではないのだから、それくらい自分でどうにかしなくては。
頭ではわかっているのに、唐突にひとりぼっちになったような怖さに身体が小さく震えだす。



