『あの人、やっぱりロングヘアの子が好みなのね。お風呂上がり、髪を乾かしたがらない?』
大翔が美咲の髪に触れるたびに佐奈の言葉がよぎり、すぐに髪を切った。それ以来、美咲は一度もロングヘアにしていない。
それ以外にもふたりが付き合っていた頃を想像させるような発言を聞かされ、過去とわかっていても苦しかった。幼い恋愛初心者の美咲には、生々しい過去の恋愛話を受け止めきれなかった。そう伝えると、大翔は絶句して美咲の髪に視線を送った。
「仲がよさそうに話している姿を見ては苦しかった。大翔さんを信じたいのに、一度は付き合っていた相手だし、また気持ちが戻ってしまうんじゃないかって考える自分が情けなかった。大翔さんが大好きだったからこそ、ふたりが夜中に電話でやり取りをしてたり、私には言えない悩みを彼女に相談したりしてるっていうのを耳にして、不安で仕方なくて……」
大翔が怪訝な表情になるが、過去を思い返しながら必死に話す美咲は気づかない。
「北見さんに言われたんです。仕事の邪魔をしないで、恋愛ごっこを楽しんだならもう大翔さんを解放してあげてって。彼に相応しいのは、同じ志や悩みを共有できる人間だと言われて、私……」
「美咲」
ついにぽろりと涙が頬を伝った瞬間、ぐっと引き寄せられる。痛いくらいの力で抱きしめられ、美咲は驚きに固まった。



