目頭が熱くなり、視界が雨と涙で滲む。余計惨めになりそうで、意地でも涙を零すまいと唇を噛み締めながら歩いた。
それでもこの先のことを考えると、絶望に染まった声が零れ落ちる。
「これから、どうしよう……」
結婚も視野に入れていた相手の浮気に打ちのめされているのも事実だが、今日から宿なしという現実もまた深刻な事態だ。
両親は他界しているため、実家は処分済み。友人の顔が数人浮かんだけれど、こんな時間からいきなり「何日か泊めてほしい」と先の予定の立たない図々しい頼み事をできるほど太い神経はしていない。
かといって、次の自宅を決めるまでホテル生活というのも金銭的に無理がある。
「……お兄ちゃん、いるかな」
情けないけれど、頼れるのは家族である兄しかいない。
美咲は半年前まで兄の篤志とふたりで暮らしていた。彼はサクラ航空に並ぶ大手航空会社『JCA』のパイロットで、日本国内だけでなく世界中を飛び回っているため、家にいる日数は限られている。
一緒に暮らしていた頃はシフトが出るたびに共有してもらっていたが、今は兄のフライト予定を全く把握していない。



