永遠の愛なんて信じません!

○学校・教室(ホームルームの時間)

紗奈M「季節は9月。高校2年生の私たちは修学旅行を来月に控えている。

先生、教卓で修学旅行の説明をしている。

先生「え〜、修学旅行は例年通り2泊3日になりますー。1日目はグループ行動、2日目は自由行動になりまーす。自由行動は2人組以上であればいいので、好きに組んでメンバーの名前を書いて提出してくださーい」

紗奈、隣の席の恵と話す。

紗奈「楽しみだなぁ、修学旅行!」

恵「私も!」

紗奈「どこ行こっか〜。食べ歩きもいいし、神社巡りも楽しそう! あ〜、楽しみすぎる〜。というか、自由行動、2人で大丈夫だった? 他に誘いたい人いる?」

恵「あのさ、陽介と話してたんだけどさ、自由行動、陽介達と一緒に回ってもいいかな? 陽介、青山くんと同じクラスで仲良いでしょ?」

紗奈「4人で回るってこと?」

恵「……うん、駄目かな?」

紗奈「良いに決まってるじゃん! せっかくだもん、彼氏と思い出作った方がいいよ! 私も壮平がいるなら気楽だし!」

恵「紗奈、ありがとう! 恩に着る!」

○コンビニ・壮平のバイト先(夕方)

壮平、レジの前で立っている。

紗奈の声「これ、くーだーさいっ!」

壮平、1 Lの牛乳と250mlサイズの紙パックの野菜ジュースをレジに通す。

壮平「340円になりま……」

壮平、目の前に紗奈がいることに気がつき、驚いた顔をする。

壮平「なんだ、紗奈か! 普通に声かけろよ〜」

壮平、苦笑いする。

紗奈「お家の牛乳きれてたから買いに来た! 6時に終わるよね? そこでお茶して待ってるね」

紗奈、コンビニのイートインスペースに座り、野菜ジュースを飲んでいる。

壮平M「お茶してるって……。コンビニのイートインスペースをお洒落なカフェのような表現で言うな」

紗奈、壮平の視線に気づいてニコッと笑う。

壮平、呆れた笑顔。

×  ×  ×
時間経過。

○住宅街・路上(夕方)

紗奈「コンビニのバイトって、覚えること多そうで大変だよね」

壮平「最初は大変だったけど、今は慣れた。それよりも、レジ担当の時とかはずっと立ってることがキツイかも」

紗奈「確かに!ちょっと動きたいよね! あ! そういえば、陽介くんから修学旅行の話聞いた?」

壮平「ああ、一緒に回るって話だろ? 楽しみだな!」

紗奈「うん! 壮平と陽介くんが仲良しで良かったよ〜。でもさ、2人の邪魔になりそうだったらさ、途中で私たち抜けようね! ちゃんとデートしていい思い出作ってほしいもんね!」

壮平「そしたら俺らも2人きりだから、デートじゃん」

紗奈「まぁ、そういうことになるか! 私たちも楽しい思い出作ろう!」

紗奈、くしゃっと笑う。

壮平「おう」

紗奈「このあと、行きたいところ計画しよ! 7時集合ね!」

壮平「はやっ、あと20分じゃん」

壮平、可笑しそうに笑う。

○壮平の自宅・壮平の部屋(夜)

20時過ぎの時計。

壮平M「7時集合って言ったやつは誰だ」

壮平、呆れた顔。

壮平「まぁいいや、遅刻なんて想定内だし、一旦寝てよ〜」

×  ×  ×
時間経過。

○壮平の自宅玄関(夜)

紗奈、壮平の自宅のインターフォンを押す。

「ピンポーン」

紗奈「あれ? いない?」

紗奈、ドアノブを引くとドアが開く。

紗奈「あれ、鍵開いてる」

紗奈、ドアの隙間から顔だけ覗き、

紗奈「壮平〜? 入っちゃうよ〜? お邪魔しまーす」

紗奈、壮平の自宅に入る。

○壮平の自宅・壮平の部屋(夜)

壮平、ベッドで寝ている。

紗奈、かがんで壮平の寝顔を見る。

紗奈M「小さい頃は一緒の布団でよく寝てたから、しょっちゅう寝顔見てたけど、こうやってまじまじ見るのって何年振りだろう」

紗奈、じっと見つめる。

壮平の綺麗な肌、高い鼻筋、サラサラの黒髪。

紗奈「綺麗な寝顔」

紗奈、壮平の頬を指でツンツンと触る。

紗奈「ふふふ。こう見ると、子どもに戻ったみたいで可愛い」

壮平、寝ぼけたまま紗奈をベッドに引き寄せて、抱きしめる。

紗奈「え、壮平!?」

壮平「好きだ……」

紗奈M「え、夢見てるの?」

壮平「どこにも行くな」

壮平の抱き締める腕に力が入る。壮平、寝ながら悲しそうな顔をしている。

紗奈M「どうしてそんな悲しそうな顔をしているの?」

紗奈「……壮平? 大丈夫?」

紗奈、壮平の腕を優しく叩き、起こそうとする。

壮平の手が、紗奈の部屋着の中に入り、胸を触ろうとする。

紗奈、顔が真っ赤になる。

紗奈「ぎゃー!!」

紗奈、パンチをして壮平がベッドから落ちる。

壮平「いってぇ……」

顔をしかめる壮平。

紗奈「大丈夫? ごめん!」

ベッドのそばで、慌てて心配する紗奈。

壮平「あれ? 紗奈。いつ来たの?」

紗奈「……今!」

紗奈、顔を赤くしたまま俯き、壮平と目が合わない。

壮平「ん? これってどういう状況だった?」

冷や汗をかく壮平。

紗奈「いや、えっとその……。部屋に着いたら壮平が寝てて……、起こしたら落ちちゃったみたい……」

不自然な紗奈の様子に、焦る壮平。

壮平「俺、……もしかしてなんか紗奈にした?」

紗奈「全然全然!! なんにもなんにも!!」

顔が赤いまま慌てる紗奈を見て、凹む壮平。

壮平M「なにしたんだ、俺!」

紗奈「あっ、そうだ! 行きたいとこ調べよ〜?」

紗奈、ローテーブルの前に座り、スマートフォンを見始める。

紗奈「ここの牡蠣は絶対食べたいんだよね〜!」

壮平、紗奈の真隣に座る。

壮平「(紗奈の顔を覗き込みながら)あのさ、紗奈の顔見てたらだいたい嘘ついてることくらい分かるから。俺が紗奈になんかしちゃったんだよな? ごめんな?」

紗奈、首を横に振る。

壮平「俺何した? 教えてくれない? 知らないまま、紗奈の嫌がることしてたら俺が嫌なんだ」

紗奈、恥ずかしそうに壮平をじーっと見つめる。

壮平、見つめ返す。

紗奈、目を逸らして、

紗奈「(ボソボソした話し方で)服の中に手を入れられて、胸を触られそうになった」

壮平、顔を赤くし驚いた顔をする。

壮平、ローテーブルに顔を伏せる。

壮平「ほんとごめん。俺の想像超えてた」

壮平、凹んでブツブツ独り言を呟く。

壮平「サイテーだー。クズすぎるー。あー、消えてぇー」

紗奈「ふふふ」

紗奈、可笑しそうに笑う。

紗奈「いいよ、寝ぼけてたんだし。怒ってもないし傷ついてもないよ! びっくりはしたけどね。それに私もごめん! 思いっきり壮平のこと殴っちゃった! おあいこね!」

紗奈、ニコニコした顔で話す。

壮平「(目を逸らしながら)ごめん。……ありがとう」

紗奈「でも、壮平、欲求不満なんだね」

紗奈、ニヤニヤしながらからかう。

壮平「うっせー。健全な高2男子だわ!」

紗奈、大笑いする。

○修学旅行 1日目 大型バス・車内

紗奈M「今日から待ちに待った2泊3日の修学旅行! お天気も快晴です」

隣同士で座る紗奈と恵。

紗奈「あ〜、楽しみすぎて昨日の夜、全然寝れなかったんだよねぇ。寝不足〜」

恵「小学生か!」

紗奈「ははは」

×  ×  ×
(フラッシュ)
博物館の中を回る紗奈と恵。巨大な恐竜の骨の再現を見上げる紗奈と恵。
×  ×  ×

×  ×  ×
(フラッシュ)
植物園の中を歩いている紗奈と恵。パイナップルの実をじっと観察する紗奈と恵。
×  ×  ×

○宿泊先・部屋(夜)

紗奈「はぁ〜、楽しかった〜」

敷布団の上に座る紗奈。

紗奈M「それにしても、みんな大浴場いいなぁ。私は生理だから部屋のシャワーでサクッと終わっちゃったよ。あー、暇だな」

布団だけがたくさん敷かれた、誰もいない畳の部屋。

紗奈M「みんなしばらく帰ってこないだろうし、ホテル探索でもするか」

紗奈、浴衣を来たまま廊下に出る。

○宿泊先・廊下(夜)

紗奈M「あ、お土産屋さん見るのも楽しいじゃん、そうしよう!」

紗奈、廊下の角を曲がろうとしたとき、男女の声が聞こえて立ち止まる。こっそり覗くと、そこには壮平と、壮平と同じクラスの女子生徒が向かい合って立っている。

女子生徒「来てくれてありがとう。もう気づいてると思うんだけど、私……、青山くんのことが好きなの! 付き合ってくれませんか!」

壮平「……ありがとう。でも、ごめん」

女子生徒「なんで?」

壮平「好きな人がいるんだ」

女子生徒「それって、竹内さん?」

紗奈、驚いた顔をする。

紗奈M「私!?」

壮平「内緒」

女子生徒「そうだよね、ごめんごめん! 時間作ってくれてありがとう! おやすみ!」

壮平「おやすみ」

紗奈、また曲がり角に隠れて深呼吸をする。

紗奈M「また幼馴染の告白される現場を目撃してしまった。お土産屋さんに行きたいのに……。しょうがない、遠回りするか」

壮平「おい!」

紗奈、振り返ると壮平がいる。

紗奈「あ……、壮平! いたんだぁ! ははは」

紗奈、冷や汗をかきながら作り笑いをする。

壮平「いや、紗奈ずっと見てただろ。気づいてたからな」

壮平、目を細め、軽蔑した顔で見る。

○(回想)告白されている場面(壮平からの視点)

女子生徒の後ろの廊下の角から、覗いてる紗奈。上半身がガッツリ見えている。

壮平、ギョッとする。

(回想終わり)

○宿泊先・廊下(夜)

紗奈「ごめんごめん。覗くつもりはなかったんだ。そこを通ろうと思っただけなの。それにしてもモテるね、壮平。2年生になって何回目?」

壮平「忘れたー」

紗奈「うわ、忘れるほど告白されたってこと? 嫌味な男〜」

紗奈、口を尖らせながら嫌味を言う。

紗奈「そういえば、壮平の好きな人って誰?」

壮平「誰でしょう」

紗奈「え、教えてくれないの?」

壮平「よく俺を見てたら簡単に分かるよ。紗奈は察しが悪すぎ」

紗奈「はいはい、観察力のない人間ですよ」

壮平「そういえば、1人でどこ行こうとしてたの?」

紗奈「お土産屋さん! みんな大浴場行ってて暇だからさ」

壮平「紗奈も大浴場行けばいいじゃん」

紗奈「……入れないんだ〜」

壮平「なんで? 潔癖じゃないだろ?」

紗奈「……生理だからさ」

壮平「……あー、そうか。わりぃーわりぃー」

壮平、照れながら頭を掻く。

壮平「俺も行くよ、暇だし」

紗奈「いいの? やった」

○宿泊先・お土産屋(夜)

紗奈「こういうところのお土産屋さんって、不思議なもの売ってたりするから楽しいよね」

壮平「(笑いながら)そうそう、これとか別にご当地でもねぇの」

壮平、可愛くない顔をした人参のマスコットのキーホルダーを持って紗奈に見せる。

紗奈「でもなんか、欲しくなっちゃって買っちゃったりするんだよね」

壮平「そうそう、でも家に持ち帰って見ると、いらなかったかもってなるんだよね」

紗奈と壮平、大笑いする。

他の宿泊者A「外、星きれいだったね〜」

他の宿泊者B「ほんとに〜! いいもの見れたね」

通りすがりの他の宿泊者の会話が聞こえる。

目を見合わせる紗奈と壮平。

(2人同時に)
紗奈「行こう!」
壮平「行くか!」

浴衣のまま宿の正面玄関を出る2人。

紗奈「寒い〜」

紗奈、両腕を前にクロスして寒そうにする。

壮平「な、見たらすぐ中入ろうぜ」

○宿泊先・屋外(夜)

2人以外誰もいない静かな空間。

空を見上げる2人。

紗奈・壮平「わぁ〜!!」

空一面に広がる星空。

紗奈「きれーい!!」

壮平「だな」

紗奈「うわー……」

目をキラキラさせながら、星空に見入っている紗奈。

その姿を見つめる壮平。

紗奈「私、今日生理で本当に良かった!」

壮平「(苦笑いしながら)単純だな。それはなによりです。でも俺も紗奈と見られて良かった」

紗奈「私も!」

壮平「あ、流れ星だ!」

紗奈「え、どこどこ!?」

壮平「うっそ〜」

紗奈「信じられない! もう!」

紗奈、頬を膨らまして怒る。

壮平「(笑いながら)でも、ほんとに俺が今、流れ星を見つけたとしても、教えた頃には流れ終わってるだろうから、自分の力で見つけるしかないんだろうな」

紗奈「え、なんか名言かも……」

紗奈、壮平に尊敬の眼差しを向ける。

壮平「え、どゆこと!?」

紗奈「“流れ星は自分の力で見つけるしかない”って、願い事は自分の力で叶えるしかないって意味でしょ? え、なんかロマンチックなことわざみたい」

壮平「(呆れた笑顔で)あのなぁ。俺は物理的な意味で言っただけだから!」

紗奈「とっても気に入った! 私の座右の銘にする!」

壮平「(大笑いしながら)まじでやめろ、感化されすぎ。あー、おもしれぇー」

紗奈と壮平、大笑いする。

壮平「でも、周りの力も頼っていいんじゃねーの? 俺ももし、次本当に流れ星見つけたら、超高速で紗奈に教えてやるよ」

紗奈「それ、光の速さと同じくらいで反応してくれるってこと?」

壮平「うん」

紗奈「(笑いながら)私も光の速さで反応しないと間に合わないよね?」

壮平「うん。問題ないだろ、俺たちなら」

紗奈「うん、そうだね」

紗奈、星空を眺める。

紗奈「あー明日楽しみだな。壮平と旅行なんて、こんなに昔から一緒にいるのに初めてじゃない?」

壮平「だな。旅行なんて普段行けないから楽しもうぜ!」

紗奈「(満面の笑みで)うん!」

壮平「寒いし、中入るか」

綺麗な星空。