七宝 ‐なほ‐

「なーほー!」

校舎から駆け寄ってくるのは、海渡。
海渡の隣には、可愛らしい女の子がいる。

「これ、飯野ちゃん。
飯野 陽花、同じクラス」

陽花は、海渡の腕に自分の腕を絡めながら、ジーッと七宝を見る。
海渡からも嫌がる素振りが見当たらない。
その瞬間、ズキズキと七宝の胸が痛み出した。

「飯野ちゃん、左から、りゅーう、涼香、なーほー」

陽花は、ペコリと頭を下げる。

「あたし、なーほーと仲良くなりたいからメールアドレスを教えてくれないかな?」

陽花の言葉に、特に断る理由もないから、陽花にメールアドレスを教えた。

その夜、陽花からメールが届いた。

『メールアドレス、教えてくれてありがとう。
なーほーは好きな人いる?』

『好きな人、いるよ。
陽花ちゃんは?』

『はーるーでいいよ!
あたし、海渡が好きなんだぁ』

『海渡、かっこいいもんね』

『わかる!?
でも、海渡、好きな子がいるみたいなんだよね』

陽花からのメールで、初めて、海渡は好きな人がいる事を知った。