それまで俺にも、父親にも隠してたことが許せなくて、思わず母親を殴ってしまった。
軽くしたつもり…
そんな被害は出ないはずと思っていたのに…
その衝撃でお腹にいた命は、あっけなく失われた。
俺は、母親の手術をしている病院の廊下で、声を殺して泣いた。
2時間も、3時間も。
先生が出てきても、涙が枯れても、心の穴は塞がるどころかどんどん大きくなっていった。
母親の大事なものを奪った。
父親にも迷惑をかけた。
それがもはやトラウマとなり、俺は責任を持って家を出た。
それから今はこのマンションに住んでいる。



