「盗賊討伐依頼 報酬 金貨 40枚 場所 不明 ランク A 備考 二つ名 銀斧のフィナン」、「ライトウルフ討伐依頼 報酬 金貨 30枚 場所 ▲▲草原 ランク C 備考 特になし」、「ミミック討伐依頼 報酬 金貨 40枚 場所 ■■森 ランク A 備考 宝箱に擬態しているが人間より大きく、推定年齢100」いい感じの依頼発見。
「依頼見つけたぞー!」
私たちはBランクパーティー「ブラックローズ」。一応Bランクとされているけれど、普通のCランクのパーティーなら勝てるライトウルフ(全身が光るオオカミ。あまりに光るので眩しく非常に戦いづらい)に勝てないけれど、Aランクのパーティーでも負けることがあるバジリスクには勝てる。つまり一風変わったモンスター専門パーティーなのだ。今日、私が見つけた依頼はミミック。これも変わったモンスターだ。
このパーティーの構成は私、剣士のシルナ、ヒーラーのユール、魔法使いのナヴェン、シルフのランズ。四人組全員女子。仲良しこよしの人気者だ。あまりに変わった依頼しか受けないので、却って妬まれない。全員が黒髪なのが余計に人気を生む。髪を後ろでくくって、男装に近い格好の私。対照的に長い髪を後ろに伸ばして神官服のユール。三つ編みに魔女帽子が似合うナヴェン。ボブヘアと裾を縛ったズボンが特徴のランズ。見事なほど全員がバラバラの格好で、でも不思議と一体感のあるパーティーだ(自分で言うのも何だけど)。
「さあ、行きましょうか」
こういうところで指示を出すのはユール。
「最終確認。標的は大きなミミック、行き先は■■森。自分が見つけて、シルナとナヴェンで攻撃、ユールは危険そうなら回復」
小さいながらも聞き取りやすい声で最終確認をするのはランズ。
「ボクこの前ね、新しい魔法覚えてさ、料理に使ったら師匠に怒られてさー」
緊張を解すように関係ない話をしだすのがナヴェン。
「何魔法?」
相槌は私。
「剣魔法。肉切るのに使ったらさー、粉々になってしまった」
必ずと言っていいほどオチがつき、ランズが吹き出す。依頼の場所に着くまでのいつもの様子。いつも同じパターン。■■森はそんなに遠くないのですぐに着いた。
「行きますよー!!」
ユールの掛け声で始める。といっても森の中を警戒しながら進むだけだが。先頭が私、その後にランズ、ユール、最後尾がナヴェン。敵が前から来ても、後ろから来てもどうにかなる。このように人間が相手でも。は?人間?
「危ないじゃないですか!」
ユールの文句は妥当だと思う。突然冒険者の前に飛び出したら危険だ。
「すみません、すみません」
平謝りする相手にナヴェンが笑いかける。
「この辺りモンスターもいるので気を付けてくださいな」
相手は謝りながら私たちとすれ違った。
見つからない。今回のターゲットはどこにいるのやら。ここ一時間程探したが姿どころか痕跡すら見当たらない。その時ランズがハッとするようなことを言った。
「依頼の場所は■■森としか書いてなかった。奥とは書いてない。そもそも宝箱として襲うなら森の入口付近が妥当。」
「さっきの方が行かれたほうですよね?」
心持ち、ユールの顔が青い。全員が踵を返して森の入り口のほうへ向かう。先頭と最後尾が戦闘員なのでそのままでいい。ナヴェン、ユール、ランズ、私。その時ユールが倒れた。
「ユール!」
「曲者、、、!」
「何者!」
ナヴェン、ランズ、私の台詞。いきなりユールが切られたのだ。ヒーラーのユールが切られたのだから回復できない。三人で警戒態勢に入る。ユールの切り傷は鋭い爪か何かで切られたような傷。何かが直接やってくると思っておく。来た。人影、盗賊だろうか。
違う。先程すれ違った人だ。ローブを着ているので顔は見えないが、斧を持っている。斧。確かに鋭いものなら切り傷くらい簡単に作れる。犯人はこいつだ。
「ウインド・カッター!」
ナヴェンの魔法。鋭い風が辺りを切り裂く。犯人のフードをも。見えた顔は女だった。そういえばさっき謝る声が高かった。
「お前がうちのヒーラーを切ったのか?」
尋ねてみる。
「そう。あなたたちの狩るモンスターはこの子でしょう?」
そういう女の隣に大きな宝箱がある。多分あれがミミックだ。
「モンスターに『子』?ふざけるのも大概にしろ。そいつは人間を何人も食っている」
「知ってるよ。そのうえでこの子を助ける」
女は不敵に嗤う。彼女が斧を振り上げると同時に私も剣を構える。同時に走り出して斧と剣を交え...なかった。すり抜けられて反対側へ。彼女は足が速く、私が追いつく前にナヴェンを切っていた。追いついた私の剣を難なく払いのけ、勢いが余った私を放ってランズと斧と剣を交える。ランズの探険の腕は折り紙付きなのに苦戦しているのはランズの方だ。助太刀に走る私を軽く一瞥しただけで、一瞬気を抜いたランズを切り捨てる。あっけにとられた一瞬をつかれ、私も切られた。その時、気づいた。ギルドにあった依頼の一つ、盗賊討伐依頼。銀斧のフィナン。この女がそうだ。ギルドに文句を言いたい。彼女に勝とうと思ったらSランク冒険者がいないと。あれはランクSの依頼だろ。そして視界が暗くなっていった。
「依頼見つけたぞー!」
私たちはBランクパーティー「ブラックローズ」。一応Bランクとされているけれど、普通のCランクのパーティーなら勝てるライトウルフ(全身が光るオオカミ。あまりに光るので眩しく非常に戦いづらい)に勝てないけれど、Aランクのパーティーでも負けることがあるバジリスクには勝てる。つまり一風変わったモンスター専門パーティーなのだ。今日、私が見つけた依頼はミミック。これも変わったモンスターだ。
このパーティーの構成は私、剣士のシルナ、ヒーラーのユール、魔法使いのナヴェン、シルフのランズ。四人組全員女子。仲良しこよしの人気者だ。あまりに変わった依頼しか受けないので、却って妬まれない。全員が黒髪なのが余計に人気を生む。髪を後ろでくくって、男装に近い格好の私。対照的に長い髪を後ろに伸ばして神官服のユール。三つ編みに魔女帽子が似合うナヴェン。ボブヘアと裾を縛ったズボンが特徴のランズ。見事なほど全員がバラバラの格好で、でも不思議と一体感のあるパーティーだ(自分で言うのも何だけど)。
「さあ、行きましょうか」
こういうところで指示を出すのはユール。
「最終確認。標的は大きなミミック、行き先は■■森。自分が見つけて、シルナとナヴェンで攻撃、ユールは危険そうなら回復」
小さいながらも聞き取りやすい声で最終確認をするのはランズ。
「ボクこの前ね、新しい魔法覚えてさ、料理に使ったら師匠に怒られてさー」
緊張を解すように関係ない話をしだすのがナヴェン。
「何魔法?」
相槌は私。
「剣魔法。肉切るのに使ったらさー、粉々になってしまった」
必ずと言っていいほどオチがつき、ランズが吹き出す。依頼の場所に着くまでのいつもの様子。いつも同じパターン。■■森はそんなに遠くないのですぐに着いた。
「行きますよー!!」
ユールの掛け声で始める。といっても森の中を警戒しながら進むだけだが。先頭が私、その後にランズ、ユール、最後尾がナヴェン。敵が前から来ても、後ろから来てもどうにかなる。このように人間が相手でも。は?人間?
「危ないじゃないですか!」
ユールの文句は妥当だと思う。突然冒険者の前に飛び出したら危険だ。
「すみません、すみません」
平謝りする相手にナヴェンが笑いかける。
「この辺りモンスターもいるので気を付けてくださいな」
相手は謝りながら私たちとすれ違った。
見つからない。今回のターゲットはどこにいるのやら。ここ一時間程探したが姿どころか痕跡すら見当たらない。その時ランズがハッとするようなことを言った。
「依頼の場所は■■森としか書いてなかった。奥とは書いてない。そもそも宝箱として襲うなら森の入口付近が妥当。」
「さっきの方が行かれたほうですよね?」
心持ち、ユールの顔が青い。全員が踵を返して森の入り口のほうへ向かう。先頭と最後尾が戦闘員なのでそのままでいい。ナヴェン、ユール、ランズ、私。その時ユールが倒れた。
「ユール!」
「曲者、、、!」
「何者!」
ナヴェン、ランズ、私の台詞。いきなりユールが切られたのだ。ヒーラーのユールが切られたのだから回復できない。三人で警戒態勢に入る。ユールの切り傷は鋭い爪か何かで切られたような傷。何かが直接やってくると思っておく。来た。人影、盗賊だろうか。
違う。先程すれ違った人だ。ローブを着ているので顔は見えないが、斧を持っている。斧。確かに鋭いものなら切り傷くらい簡単に作れる。犯人はこいつだ。
「ウインド・カッター!」
ナヴェンの魔法。鋭い風が辺りを切り裂く。犯人のフードをも。見えた顔は女だった。そういえばさっき謝る声が高かった。
「お前がうちのヒーラーを切ったのか?」
尋ねてみる。
「そう。あなたたちの狩るモンスターはこの子でしょう?」
そういう女の隣に大きな宝箱がある。多分あれがミミックだ。
「モンスターに『子』?ふざけるのも大概にしろ。そいつは人間を何人も食っている」
「知ってるよ。そのうえでこの子を助ける」
女は不敵に嗤う。彼女が斧を振り上げると同時に私も剣を構える。同時に走り出して斧と剣を交え...なかった。すり抜けられて反対側へ。彼女は足が速く、私が追いつく前にナヴェンを切っていた。追いついた私の剣を難なく払いのけ、勢いが余った私を放ってランズと斧と剣を交える。ランズの探険の腕は折り紙付きなのに苦戦しているのはランズの方だ。助太刀に走る私を軽く一瞥しただけで、一瞬気を抜いたランズを切り捨てる。あっけにとられた一瞬をつかれ、私も切られた。その時、気づいた。ギルドにあった依頼の一つ、盗賊討伐依頼。銀斧のフィナン。この女がそうだ。ギルドに文句を言いたい。彼女に勝とうと思ったらSランク冒険者がいないと。あれはランクSの依頼だろ。そして視界が暗くなっていった。

