九条先輩の甘い溺愛

「透先輩、お久しぶりですね」


「確かにいつも電話だったから直接会うのは久しぶりだな」



もう先輩と出会ってから一年以上経っているだなんて。初めて会ったときからこれほど関わるようになるなんて思いもしなかった。
最初は変な先輩だと思っていたけど。

最初のあの対応なんて今は思い出したくもない。すっごい失礼だったし、そんな私に毎日話しかけてくれた先輩のおかげで今の私がいるんだから。たくさんの経験と、思い出。全部先輩が私にくれたもの。



「あ、そのキーホルダー懐かしいな」



先輩が私のバッグにつけているキーホルダーを指さした。



「透先輩にもらった初めてのプレゼントなんで」


「それにしてもいつまで先輩呼びなの?俺はもう卒業生なんだけど?」


「それは、もう癖というか慣れというか……」



本音を言うと、透さんとか透君とかそういう呼び方をするのは緊張するって言うだけなんだけど……。
先輩もきっとそれをわかって聞いてきてるはず。先輩が私のことに詳しいのと同じで、私も十分先輩のことを知っているんだから。



「透先輩だって最初、花宮って呼んでましたし!それとおんなじです!」


「ふはっ、それもそうだな。でも俺は乙葉が隣にいてくれるならなんでもいいよ」



私の手をぎゅっと握りながら、私の耳元に口を寄せる。



「わざわざ耳元で言う必要……ない、じゃないですか……」


「乙葉の照れた顔がみたくて。やっぱり可愛い」



意地悪なのに、それでいて優しい目を向けてくる先輩にどうしていいかわからなくなる。
どんな表情でもかっこいいなんて、ずるいじゃないですか。