九条先輩の甘い溺愛

「花音に呼び出されたことを隠したのは、乙葉の身が危険になってもいいのかって脅されたからだ」



花音が考えそうなことだ……。



「花音はなんで乙葉を選ぶんだって、私を選んでくれれば私がお父様に失望された分を取り返せるのにって。そう言われてキスされそうになったんだ」


思わず息が止まりそうになる。やっぱり見間違いじゃなかった。
聞きたくはないけど、恐る恐る口を開く。


「キスしたんですか……?」


「するわけないだろ?ちゃんと止めた。本人に聞けばわかるはずだよ。それで、この紙を貰った」



ほっとしながら先輩から紙を受け取る。
これ…先輩の誕生日のハートカード……。なんで花音が……。



「花音が意図的に隠していたらしい。でも、もうやめるどうでもいいって言っていたよ」



花音がそんなことを言っていたなんて。
やっぱり花音の嘘だった。そもそも落ち着いて考えれば中々考えにくい話だった。



「ごめん。不安にさせた」


「もう良いですよ。私も冷静じゃなかったですし」



少しシワになっていたハートを広げる。きっと先輩が焦って握りしめたんだろう。


「疑ってごめんなさい。タイミングとか雰囲気とかやっぱりうまく行かないけれど、こんな私と付き合ってくれますか?」


「もちろん。俺こそごめんね、一生愛してる」


「それは重いですよ先輩」


「それくらいじゃないと乙葉の隣は守れないだろ?」



私の隣はずっと先輩のものですよ。