九条先輩の甘い溺愛

「こんなとこに呼び出してまでなんの用?私忙しいんだけど」


「さっき先輩と何、話してたの」



震えを抑えながらそう口にする。



「あ、さっきの来てたんだ!怖気づいて来なかったのかと思った」


「そんなのあんたの愛しの九条先輩に聞けばいいじゃない」



全て分かっているかのように笑う花音に嫌気が差す。



「花音に聞きたいの。答えて」


「そんなの九条先輩が私のことが好きだって、心変わりしたんだって話してくれたって言えばいいの?」



嘘……。そんな、こと言うわけがない。先輩が……。



「嘘だって顔してる。なら本人に聞けばいいじゃない!何で聞かないの?もしかして信用がなくなっちゃった?」



冷静になるんだ。私。花音とちゃんと話をしなきゃいけない。



「私は花音が羨ましかった。なんでも出来て認められている貴方のことが。私は貴方と比べてしまえば何も出来ない不出来な妹でしか無かったから」


「急に何よ」


「だから貴方が嫌いでもあった。居場所が既にあるのに、私の居場所をなくしていく貴方が」



でも…違った。



「私と貴方は同じだった」


「……あんたまでそれを言うのね!?私とあんた何が同じなのよ!何もしないで生きてたくせに!」


「一緒だよ。お互い愛に飢えてただけ。お父様に凄いね、偉いねって褒められたかったんでしょう」



私も認められたかった。花音みたいに褒めてほしかった。



「そんな事……あるわけないじゃない!勝手に同じにしないでよ……っ」


「お互いに理解することが足りなかった。ごめんね、花音。1人で全部背負わせてごめん」



花音を抱きしめながら、そう呟くと花音は黙りこくってしまった。



「私はあんたに謝らない。先輩のことは自分で確かめたらいいわ」



「うん。ありがとう」