九条先輩の甘い溺愛

私の意識が戻ったときは保健室のベットの上だった。
どうやら雨の中裏庭にいたところを渡瀬君が気が付いて運んでくれたらしい。


渡瀬君には申し訳ないけど、先輩が助けてくれたわけじゃないという事実に落ち込んでしまった自分がいた。
もし助けてくれてたら、あの状況も私の見間違いだって思えたのに。



「なんで雨の中裏庭にいたの?あいつは?」


「透先輩は、花音と一緒にいた」


「は?なんで……」



分かるわけないじゃない……。なんで、会っていたのかなんて。
でも今この場にいないことが全てじゃないの……?



「先輩は花音のことが好きになっちゃったみたい。やっぱり花音って私より何倍も可愛いから」



笑顔だよ、私。
笑って、私。耐えれる、こんなことなんてことない。



「乙葉はそれでいいの?」


「先輩が選んだのなら仕方ないよ」



そう、仕方ないんだよ。



「今すごく苦しそうな顔してるよ、乙葉」


「え……?いや、そんなことないよ」



そんなことない。そんなこと……。
頭ではちゃんと理解してるのに、涙が頬を伝うのがわかる。



「ちゃんと本当の気持ちを教えて。乙葉はここで悪女だって言われてる女とは違う。乙葉は乙葉なんだから」