九条先輩の甘い溺愛

「乙葉!見てこれ」


「きゃっ!何……それ」



渡瀬君を見てみると、頭にお化け屋敷用の被り物を被っていた。



「他クラスからもらってきた」



そんな自慢気に言われても……。



「ちゃんと返してきてよ?」


「えー、残念」



1時間経っても先輩が帰ってくる気配はなく、頭の中の不安を渡瀬君と遊びながら気にしないフリをしていた。
本当に大丈夫なのかな。花音が先輩になにかしたとか……?それなら説明してくれてもいい、よね?



「あいつのこと、気になる?」


「えっ!?あ……ううん。大丈夫」



先輩を信じてるから、きっと……。



「はい、これあげる。裏庭で休憩しよっか」


「アイス……?ありがとう」



裏庭のベンチに座って、アイスを頬張る。
アイスの冷たさでこのモヤモヤも無くなってしまえばいいのに。



「乙葉は俺の気持ちに応えられないのは知ってる。だけど、友達として俺は君を支えるよ」


「ありがとう……。私何もかも受け取ってばかりで、何も返せてない」


「そんなことない。あの時、俺が誰かに認められたいって思ってたことを気づかせてくれたのは誰でもない乙葉だから。自分自身でも気が付かなかった感情を教えてくれたから」



私はそんなすごい人間じゃないのに……。
そう思っていると、ポケットのスマホが振動する。


「先輩かも……」


「お、それはよかった……ってどうした?」



先輩じゃない……花音からだ。どうして今メールを送ってくるの?
これ以上私に変な考えを思い浮かばせないでよ。



「花音からみたい。行ってくるね」


「あ、あぁ……。気を付けて」