九条先輩の甘い溺愛

「俺は昔、乙葉と花音に会ったことがある」



先輩はゆっくりと息をついて、そう話し始めた。


先輩は有名会社の社長の息子で、御曹司であること。両親が自由に育ってほしいとのことで、先輩が成人するまで公表していないということ。



「俺は昔みたいに乙葉に笑っていてほしかった。自由になってほしかった。俺が社長の息子だって乙葉のお父さんに知られたら、会社の利益のために使われるかもしれない。それが怖かった」



「……私はもう自由ですよ、先輩。透先輩がいたから、自由になれて、本当の気持ちで向き合えたんです。だから、私も現実逃避はやめます。ちゃんと、花音とお父様と向き合います。全てが片付いたら、私と付き合ってくれますか?」



先輩は私の光。それでいて大好きで、大切な人。
だからずっと一緒にいたいんです。



「……ふはっ。なんか俺ダサいな……」


「ダサくないですよ。先輩はかっこいいです」


「……俺はいつまでも乙葉を待ってるよ」


「……はいっ!」



ぎゅっと抱きしめ合って、お互いに微笑み合った。



「キスしたいくらいだけど、今はまだこっちで満足しとくよ」



そう言っておでこに優しいキスをした。
そうだった、先輩はいつも私より上手な人だった。


そんなことを思い出して、私はクスっと笑いをこぼした。