九条先輩の甘い溺愛

【Side透】


俺はいつか乙葉にちゃんと話をしようと思っていた。
別に隠しておこうとかそんなことを思っていたわけじゃなくて、俺の立場的にそれを知ってしまったら離れて行ってしまうんじゃないかと不安だった。


乙葉は自由を知らない籠の中の小鳥そのものだった。
救いたいという気持ちは本物だし、乙葉を好きな気持ちだってもちろん本物。


ただ俺のせいでまた縛られてほしくない。
隠しておこうと思ったわけじゃないと言ったが、本当は隠し通したかったのかもしれない。


自由に笑ってほしい。でも俺が彼女の枷となるかもしれない。


でもちゃんと話さなきゃ何も変わらない。
きっと俺と付き合うまで踏み切れない不安要素にもなっていると思う。乙葉は絶対そんなことないって言うけど。


もう現実逃避するのはやめよう。どんな結果でも乙葉が選べばいい。



――俺もあいつと同じように、乙葉が全てだから。