九条先輩の甘い溺愛

【Side花音】


「婚約を破棄させていただきたいと渡瀬家の方から連絡が来たのだが。どういうことか説明できるか」


「……申し訳ありません。何度か会話を試みたのですが、拒否されてしまい……」


「その程度の理由で許されるわけないだろ!何を考えているんだ!この役立たず!」


「申し訳ありません……っ」



早く終わって……お願いだから。この時間を早く……。



「お前も乙葉となんら変わらない。使えない奴に用はない。出ていけ」


「はい……」



――バタン



私と乙葉が同じですって?今までどれだけ貢献してきたと思っているの。
自分の進みたい人生を捨てて努力してきたのに。


あいつは恋愛に夢中になりだして、最近は言うこと聞かなくなってきた。
全部、全部。私が苦しんでるのもあんたのせいなのに……!なんで私だけなの?なんで……。


あぁ。本当に反吐が出る。


壊してしまいたい。全部全部。



「花音様。当主様は少しストレスが溜まっていたようですので、お気になさらず」


「――えぇ。わかってる。大丈夫よ」



はたから何も期待なんてしてないんだから。