九条先輩の甘い溺愛

「乙葉は本当にお人好しというか、優しすぎるよな」


「そうですかね?」


「そうだよ、こんな変な奴に友達になろうなんて言わない」


「変な奴はどっちなのか、この際はっきりします?」


「喧嘩しないでくださいっ!」



あの日から、たまに3人でお弁当を食べるようになった。
先輩は乙葉と2人の時間が減るとぶつぶつ言っていたけど、今度またデートしましょうと言ったら、しぶしぶ許してくれた。


お互いまだこうやって喧嘩はするけど、仲良くなれると思うんだよなー。私の思い過ごしかな。



「それで?乙葉とそこの先輩さんは文化祭2人でまわるの?」


「お前と行くわけないだろ?1人でどっか遊んでな」


「はぁ?」



仲良くなれるにはまだまだ程遠いみたい……。



「まぁ、それはいいとして。文化祭のジンクスについてクラスの女から聞いたんだけど、気になる?」



ジンクス……?
ジンクスって縁起をかつぐ……みたいな?そういうのだったよね。



「2人の仲を受け持つなんてしたくないんだけど、乙葉が喜びそうだから仕方なく教えてあげる」


「俺の扱い雑だろ、お前」



あはは……。



渡瀬君が言うには、文化祭で配られるハートのカードには数字がかかれているらしく、その数字が好きな人の誕生日であればその人へそのカードをプレゼントする。お互いに交換できれば、付き合える――みたいなものらしい。



「で、2人ってまだ付き合ってないでしょ」


「……そう、ですね」


「乙葉が心の準備をしたいって言うから俺は待ち続けるよ」


「それのきっかけにでもなればいいねって感じで教えたけど。まぁ、2人次第だよ」



先輩と付き合うなら、花音との問題もちゃんと片付けなきゃいけない。
お父様ともちゃんと向き合わなきゃいけない。


それが私にできるんだろうか……。