九条先輩の甘い溺愛

花音はあれから特に何もしてこない。今のところちょっとした雑用を回されたりするくらい。

ただ……。



「乙葉。あいつのこと好きなの?」


「あなたに関係ないです」



渡瀬さんが以前よりよく絡んでくるようになった。
運ばなきゃいけないものも多いし、あまり目立ちたくない。



「荷物重いだろ?持つからさ」


「大丈夫ですから。自分の仕事をしてください」


「俺は乙葉の傍にいることが仕事」



はぁ……。話にならない。

悪女と言われてる私が荷物運んでるってことが少しでも広まると、噂に疑問を持つ人が現れるかもしれない。それだけは駄目なの。私がこうしていればいつかきっと……お父様も私を見てくれる。花音の引き立て役でも、きっと……。


少し心が痛いけど、仕方ない。



「じゃあこの荷物全部運んどいて。それくらいできるわよね?」


「もちろん。乙葉のためならなんでもするよ」



やっぱり引きとめようか一瞬迷っている間に、もう曲がり角を曲がって姿が見えなくなっていた。


追いかけようかな……。
流石にあの場面だけ注目されればみんな後のことを気にせず話を広めるはず。