九条先輩の甘い溺愛

文化祭準備が始まって、一段と学校が騒がしく感じる。
もちろん私はクラスの出し物に参加できるわけもないから裏庭で過ごしているけど。


少し残念だなって思わなくもないけれど、仕方のないことだとも思う。
ベンチに腰を掛けて、空を仰ぐ。


先輩と出会ったこの場所にいられるのなら、それで十分かもな。



「やっぱりここだよな」


「透先輩……」



声が聞こえたほうを向くと、私の横に座って飲み物を手渡す先輩がいた。
カフェオレ……。先輩の手元を見ると、いちごミルクのパックだった。



「ふふっ、甘党なんですね」


「あー、これは……買い間違えただけだ」


「じゃあ、カフェオレと交換します?」


「いや、それはいい……」



素直に言えばいいのに。
私が堪えきれず笑いをこぼすと、ムッとした表情でパックにストローをさした。



「ふふっあははっ、怒らないでくださいよ」


「別に怒ってない」


「――そういう先輩も好きですから」


「ん?何か言った?」


「えっ?あ、何も言ってませんよ!」



声に出てたなんて、恥ずかしい……っ。
流石に恋に溺れすぎてるよね。



「そう言えば、この前の返事ちゃんと聞かせてくれる?」


「へっ?……あ、文化祭のですね」


「うん。別に強制はしてないから、乙葉が決めて」


もちろんです!って言いたい気持ちはあったけど、この前花音と渡瀬さんが許嫁って話がでたとき、先輩にも私のせいで迷惑をかけてるんだって実感しちゃったから……。
先輩と一緒過ごせるなんてすごく嬉しいし、行きたい。


でも、何も伝えないで断るのはきっと違う。私は先輩に出会ってから変わったんだって。そう感じているから。



「透先輩と文化祭、一緒に過ごしたいです。でも……私の噂で迷惑をかけてしまうのは駄目なことだって思うんです」


「……迷惑とか思ってない」


「一緒に過ごしたくないわけじゃないんです!それは本当です」


「じゃあ、俺に迷惑とか考えなくていい。俺は乙葉自身を見てるし、誰でもない乙葉が好きなんだ。だから一緒にいたい。それだけじゃ乙葉の隣にいるには頼りないか?」



今……好きって、言われた……?



「あー、もう少し後で言おうと思ってたのに。雰囲気もなにもないなこれ」



やっちまったと言った表情で首に手をあてる先輩に戸惑いが隠せない。
先輩が私のこと好きってこと……だよね?



「今のは忘れて……って乙葉泣いてる?ごめん、嫌だったよな?」


「ちっ、違います!……私もずっと、好きでしたっ」


「え……」


「だからっ……その、先輩さえ良ければ文化祭一緒に過ごしてくれませんかっ!」


「抱きしめても、いいか?」