九条先輩の甘い溺愛

いつも通り裏庭に行くと、人影が見えて思わず足を止めた。
誰だろう……?

その人は私がいることに気が付くと軽く手を挙げてこちらに歩いてきた。



「おー、昨日ぶりだね」


「待ち伏せですか……?」


「悪く言えばそうなんだけど、あの時シャーペン落としてたからさ」



シャーペン?……あ、そう言えば一本少ないと思っていたんだよね。
誰かが盗んで捨てたのかと勝手に思ってた。



「ありがとうございます、ではこれで」


「ちょっと待って」


「……なんでしょうか」



この人すぐ人のこと止めるんだから。私に話しかける時点で相当変な人だけど、さらに上の変人ってことかしら。



「なんか今凄い誤解を生んだような」


「気のせいです。それで、何か話したいことがあるんですか?」


「君と仲良くなりたいなと思ってさ」


「え……?」



この人変人にもほどがない⁉私学園中の嫌われ者よ?
みんな近づきさえしないのに、仲良くなりたいだなんて。



「無理かな?」


「私と関わっても良いことないですし、お勧めしないです」


「つまり、仲良くするか決めていいのは俺ってことね」



なんでそうなるの!私遠回しどころかほぼ直接的に断ったよね?
嬉しそうに笑いながらこちらを見てくる変人に心の中で思わずため息をついた。