九条先輩の甘い溺愛

あの日は私がベットで、先輩がソファで寝るという形で終わった。交互に使おうという話でしぶしぶといった感じではあったけど、先輩は納得してくれた。


そんな先輩と今日は初めて外出する日。
お父様に許可もなしで何か行動をしたのも初めてで、解放感に心が躍る。



「じゃあ、行こうか」



先輩に差し出された手に戸惑っていると、「デートだろ?」と言いながら私の手をとった。
やっぱりデートなんだ……。


高鳴る心臓を落ち着かせながら、勇気を出して先輩の手を握り返した。


おかしくない、よね?


先輩の方をちらっと見ると、片手で顔を隠していて表情はよくわからなかった。



「……」


「……」



お互いなぜか無言になってしまって、少し気まずい中、私は初めて自分の意思で外へ出た。


この無言の中、心臓だけはバクバクと鳴っていた。
どうか、先輩に聞こえていませんように……。