九条先輩の甘い溺愛

「ごめん。そんな顔をさせたいわけじゃなかったんだ」



先輩は悲しそうに、私の頬に手を当てる。
表情を顔に出さないことには自信があったのに、先輩には気が付かれちゃうなんて。



「私、外に出たことが殆どないんです。何があるのか、何ができるのか。本とか言葉伝いでしか知らなくて」



先輩は優しい表情で相槌をうってくれる。
この表情にいつも安心してしまう。



「お父様に許可を出してもらわなきゃいけないんですけど、今まで一回も許可が下りたことがないので外出は無理だと思います。ごめんなさい」



先輩と休日に出かけるなんて、きっと楽しいんだろうけど。


「遊んでいる暇があるなら努力をしろ」聞き飽きるほど聞いた言葉が頭をよぎる。



「じゃあ、連れ出してあげようか」


「え……？」