常に礼儀正しく、家の恥とならないように過ごせ。それが花宮家の家訓だった。
私を縛る呪いのようなもの。家訓通りに過ごそうと努力したって、罵倒され、軽蔑の目を向けられ、笑われる。
私は優秀な子供じゃなかったから、「外出なんてしている暇があったら努力をしろ」そう言われてきた。
努力をしなかったわけじゃない。ただ才能の前に諦めてしまった。
姉という壁にぶつかって、お父様に認めてもらうなんて淡い期待を捨てた。
さっきまで高ぶっていた気持ちが自分でも驚くほどに冷めきっている。
「……いえ、大丈夫ですよ」
私、ちゃんと笑えてるよね。
