九条先輩の甘い溺愛

「さぁ、入って?」


「……お邪魔します」



先輩の部屋は一回入ったことがあるけど、あの時は別に好きとかそういう意識もなかった。だから余計に、今またこの部屋に入るのは緊張するのに……!



「そこら辺好きに座ってて。飲み物とってくる」


「あ、はい。ありがとうございます」



そこら中に先輩の私物があると思うと、間違えて壊してしまわないかと全身に力が入る。
なんだか落ち着かないというか、ソワソワしてしまう。



「そういや、今度の連休暇か?」



私に飲み物を渡しながら、床に座る。
いつも中庭で隣に座っているし慣れているはずなのに、先輩の部屋にいるせいか心臓の鼓動が激しい。

冷静にならないと。



「特に……予定はないですね」


「じゃあさ、買い物付き合ってくれないか?」


「買い物、ですか……」



外出はお父様に許可を出してもらう必要がある。これでも花宮家の娘だから、監視対象には入るんだろう。


ただ、外出許可が出たことは一回もない。外の世界を知るのは会社で開かれたパーティーか、お父様が機嫌のいい時くらい。