九条先輩の甘い溺愛

「じゃあ、俺の部屋来る?」


「はっ、はぁ!?」



――遡ること3時間前。


先生からもらった手紙を片手に寮部屋へ戻ったはいいものの、私と相部屋なんてしてくれる人はもちろんいない。
誰かに頼むこともできず、あっという間に工事前日になってしまった。



「はいはい、工事するから出て行ってね」


「あ、はい!すぐ出ます」



先生に追い出されるようにして、荷物片手に部屋を失ったわけで……。



「それで俺に住める場所がないか聞いたと」


「はい……。1ヶ月部屋を借りれるとか無いですかね」


「だーかーら、俺の部屋来ればいじゃん」


「それさっき断りましたよね!?」



先輩と同じ部屋で1ヶ月なんて、絶対に緊張するし……。普通に心臓が耐えられない。



「俺と一緒は嫌か?」


「嫌とかじゃなくてですね……?」


「じゃあなに?理由言わないと俺納得しないよ?」



グイっと距離を縮められ、思わずドキッとする。
視線を横にずらしながら、言い訳を考えていると、顔をぐいっと動かされ先輩と目が合う。



「あっ、あの。近い、です……」


「うん。わざと」



わざとって……!
緊張と恥ずかしさで頭が混乱して、解放されたいがために口を開いた。



「……てもいいですか」


「ちゃんと言って?」


「……部屋お借りしてもいいですかっ!」


「うん、いいよ」



私の回答に満足したのか先輩が離れると、私と先輩の間に空間ができてほっと息をつく。
こんなはずじゃなかったのに……!