九条先輩の甘い溺愛




――夏なんていらないって本当に思う。


飲み干して空になったペットボトルと朦朧とした意識の中、空を見上げる。


気温が上がってきて夏の季節がやってきたけど、水さえあればどうにかなるなんて馬鹿げたことを考えたせいでこのざま。
裏庭しかいる場所がないからって流石にこれはやらかした……。


止まらない汗をハンカチで拭いながら、ふらふらと立ち上がる。
保健室……は遠すぎるか。


水もないし、ここはもはや砂漠。



「しんじゃう……」


「乙葉……!」


「馬鹿なのかっ!こんな真夏に外にいるなんて!」



先輩が必死な表情で駆け寄ると、私を軽々と抱えてどこかに向かって走り出す。
後で危機管理がなってないって怒るんだろうなぁ。



「ふふっ……」



先輩の肩に手を回してぎゅっとする。



「っ……!あー、もう!後で説教だからな!」




意識はぼやぼやするのにこれだけはしっかりとわかる。



――私、先輩のこと好きなんだ。