九条先輩の甘い溺愛

俺の顔をまじまじと見つめた後、ハンカチをゆっくりと手に取った。



「ありがとうっ……!」



彼女は少し悩んだ後、緊張したような表情を見せながら俺にそう言った。
涙を拭きながら笑みを浮かべた彼女のその表情に惹かれた自分がいた。


そのハンカチを彼女が持っていると知ったときは本当に驚いた。
まさかあの時の女の子と同一人物だったなんて。


高校生になった彼女には表情というものが消えていた。無理やり隠しているようなそんな感覚。


隠したその感情を、表情を。俺が全部解放してあげたいと思ってしまった。
こんなの重いなんて自覚はあったけれど、彼女のあの笑顔を彼女の傍で見たいとどうしても思ってしまったんだ。


昔そのハンカチを渡したのが俺だと気が付かなくたっていいから。



「花宮今日は機嫌よさげ?」


「また来たんですか……」



だからまた君の笑顔を見せてほしいんだ。