九条先輩の甘い溺愛

それから裏庭には行かず、先輩と極力会わないように過ごした。
これでいいんだよね……。


この苦しさもいつか忘れられる。



「あら、乙葉。なんだか元気がなさそうだけど大丈夫?」



花音……!私を心配したような表情でこちらに歩いてきた。
その白々しさに思わずカッとなって花音を突き飛ばす。



「なんでそんな平然としてられるの……!」


「痛いっ……!急に突き飛ばすなんて、酷いわ!私のことが嫌いだからってここまでしなくてもいいじゃない!」


花音は床に座り込んで泣き出す。
なんでそんなに被害者ぶれるの…?あなたが全部仕組んだことなのに!どれだけ私を苦しめれば気が済むの!


怒りのままに花音の頬をたたく。



「あんた花音になにしてるのよ!」



取り巻きの女が私に向かって手をあげる。


私がぎゅっと目をつぶったと同時にパァンと乾いた音が響く。
叩かれた頬がヒリヒリする。でもそんなことも気にならないくらい怒りが沸き上がっていた。



「花宮……?なに、して……」


「先輩……。これは……」


「九条先輩!あの女と関わらない方がいいです!花音の頬を急に叩いたんですよ!?」



どうせ、信じてくれないわ。先輩の呼びかける声を無視して、私はその場から離れた。
先輩の顔が見れなかった。


もうわかったでしょう。私が姉をいじめるやつだって……。
私の名前を呼んだ時の顔が頭から離れなかった。