九条先輩の甘い溺愛

「起きましたか?先輩」



先輩はゆっくりと目を開き、周りの状況を確認するようにまばたきをした。
私がいることに気が付くと、どうしてここにいるんだ?と言いたげな目を向けた。



「先輩倒れたんですよ、先生にも診てもらったのでちゃんと休んでてください」


「そっか……。迷惑かけたな、悪い」


「本当に心配したんですから……。あの……先輩、一つ聞きたいことがあります」



もしも、花音が先輩に手を出したなら私は……。
もうわかったことではあるけど、本人から聞かないと決心がつかない。



「今日の朝、紅茶飲みませんでした?」


「……飲んだけど、君がくれたものだろ?」


「っ……!そう、ですか……。ごめんなさい、本当に」


「なんで謝る……ってなんで泣いて……」



先輩が心配そうに布団から起き上がる。先輩が伸ばしてきた手を思わず振り払ってしまった。



「だからっ……私と関わっても良いことないって言ったのに……!」


「待て、落ちつけって……!ただ俺が体調崩しただけだろ?」


「落ち着けるわけないじゃないですか!私のせいで、私のせいで!先輩に迷惑がかかってるんです!」


「ちょっと待って、本当にどういうことだか……」


「もう私と関わらないでください」



戸惑う先輩をおいて、部屋から逃げ出した。


花音は私が独りでいれば満足なんでしょう……!
自分が何を言われても、何をされても耐えれたのは独りだったから。


さようなら、先輩。ごめんなさい、先輩。
涙が頬を伝うことなんて気にもせず、自分の部屋まで走り続けた。