九条先輩の甘い溺愛


結局あのデッサンは提出できなかったけど、いい思い出ができたかもしれない。
補修になったことは否めないけど。


いつも通り裏庭に向かうと、珍しく先輩が私より早く来ていた。



「今日は早いですね、先輩」


「……あ、あぁ。今日はちょっと早起きしたんだ」



なんかいつもより元気がない……?
先輩は少し表情が暗くみえた。



「先輩、体調悪いんですか?」


「え?いや、今日は夢見が悪くてな」


「そうなんですか……。リラックスするアロマとか音楽を聴くとか色々試してみるといいと思いますよ」


「あぁ、ありがとう」



後で温かい飲み物でも買ってこようかな。少しでもリラックスできるといいんだけど。
いつも通り本を開くと、肩がずしりと重くなる。



「え、先輩……?」



先輩が苦しそうな表情で私に寄りかかっていた。



「……だい、じょうぶ、だから」


「先輩少しおでこ触りますね…」



熱い……!絶対40度近いわ!
先輩は辛そうに息をして、今にも倒れそう。



「先輩保健室行きますよ!」


「少し寝てれば……楽になるから」


「そんなこと言ってる場合じゃないです!」



ここから保健室までかなり距離があるし、先生を呼ぶまでになにかあったりしたら大変。
ここからなら寮の方が近いかも……。



「先輩、寮の部屋どこにありますか?」


「4階の……角部屋だ」



4階の角部屋……。エレベーターがあるし、私でも辿り着けそう。
男子寮に入るのは少し気おくれするけど、授業中だし大丈夫なはず。



「先輩の部屋行きますよ!少しの辛抱です!」



症状が酷くなりませんように……!