九条先輩の甘い溺愛

「花宮は絵得意?」


「得意って程ではないです」


「じゃあ勝負しよう。どっちが上手く相手を描けるか」


「デッサンって勝負するものじゃ――」


「はい、スタート!」



先輩の勢いに負けて描き始める。
人の顔をこんなにまじまじと見たことないから少し緊張する。


集中してる先輩に少しドキッとして、変な場所に線ができてしまった。
消さないと……。


消し終わってから顔を上げると、先輩と目が合って思わず手が止まる。
先輩は少しからかうような笑みを見せて、「集中して」と言ってまた手を動かす。


別に集中してないわけじゃ……!


自分だけが余計に緊張しているような感じがして、気を紛らわせるように絵を描き進める。