九条先輩の甘い溺愛



「言い訳は結構。あとで職員室に来なさい」



やっぱり誰も信じてくれないよね。
先輩と話すようになったってだけであって、周りの信頼を得たわけじゃない。


話し方だって、花音を虐げるような言い方を身に着けさせられて育ったから。



「仕切りなおしましょう。今日はペアを作ってお互いを描くデッサンの時間を取ります。さぁ、ペアを作って始めてください」



ペアなんて作れるわけないじゃない……。
私の周りには誰も近寄らず、ぽっかりと空間ができたようだった。


遠くからクスクスと笑い声が聞こえる。
花音の策略にまんまと引っかかった私も馬鹿だよね。


もう一人になりたい。こんな目に遭うために来たわけじゃないのに……!
誰も助けてくれない、私はずっと独りだから。



「俺が一緒にいる。だから顔をあげて?」


「せん、ぱい……?」



なんでここに先輩が……。
隣に立つ先輩は少し微笑んでから、私の頭を撫でる。



「先生。昨日のデッサンの授業出席してないので、今参加してもいいですか?」


「何変なことを言ってるんですか!今は授業中です。教室に戻りなさい」


「はーい、許可ありがとうございます」



周りがざわつく中、先輩は私に手を差し出す。



「ほら、行くよ」



この場所から連れ出してくれるならなんでもいい。
先輩の差し出す手を握る。



「ちょっと……!許可してません!待ちなさい!」



絶対後で怒られるのに、それすらどうでもよく感じた。
私を助けてくれた先輩から目が離せなかった。