九条先輩の甘い溺愛




「あら、こんなとこにいたんですか花宮さん」



「椿先生……」



先輩が教室に戻ったあとすぐに、聞き覚えのある声がした。
耳に棘のように刺さる声で私の名前を呼んだのは、美術担当の椿先生。
生徒にすごい厳しいことで有名なんだけど、授業出席はギリ単位が取れるようにしてるし怒られるようなことはしてないと思う……多分。



「九条さんと雑談をしている余裕があるようですが、明日の美術の授業は出席してください」


「え、でも単位は足りてますよね?」


「そもそも授業を拒否するような生徒がいてはならないのです。明日欠席した場合は成績もつけませんし、あなたの家に連絡を入れさせていただきます」


「それだけはだめです!」



お父様だけにはバレたくない……!



「嫌なら普通に出席すればいい話です。いいですね?」


「はい……」



私の返事を聞くと、すぐに不機嫌そうに去っていった。
何も起こらないといいんだけど……。