九条先輩の甘い溺愛

先輩にお弁当を作ってもらってもうすぐ一ヶ月が経とうとしていた。
お弁当をもらってただ食べてるだけ。流石に申し訳ないと思って、食材費だけでも出そうとしたら断られるし。



「何かお礼とかしないとまずいよね……」



「お礼って誰に?」



声が聞こえた先を見ると、先輩が歩いてきていた。



「なんでもないですよ。先輩こそ今授業中ですよ」


「それは君に言われたくないなぁ」



いつも一枚上手なんだよね、流石と言えばそうなんだけど。
先輩はベンチに座って足を組む。
みんなが先輩を羨ましがる理由もわかる気がする。これで勉強もスポーツもできるのは神様の手違いだと信じたい。


私も先輩くらいなんでも出来てればお父様に認めてもらえたのかな……。いや、姉より優れていても意味ないよね。愛されないんだもん。




「そんなにまじまじと見られると流石に恥ずかしいんだけど。俺にそんなに興味ある?」


「あ、すみません……流石に神様の手違いだと信じたいなって思って」


「どういうことかはわからないけど、まぁ俺に興味持ってくれてるなら嬉しいな」


「いや別にそんなことは」


先輩から視線を外そうとすると手首をつかまれてぐいっと引っ張られる。
その勢いで先輩の胸に飛び込んでしまい、体が緊張で固まる。


「そう緊張しないで。いつかは毎日するようになるかもよ?」


「っ~~!人のことをからかうのも程々にしてください!」


先輩の胸を押して急いで離れる。
くすくすと笑いながらベンチに座りなおすと、もう何もしないから戻っておいでと自分の座っている隣をぽんぽんと叩いた。



「次こんな事したら怒りますからね」


「ごめんごめん」