「なんでお前はこんなこともできないんだ……！！」



「っ……申し訳ありません」



「花音はあんなに優秀なのに、お前ときたらこの役立たずが！花宮家の恥め！」



「申し訳……ありません」



「謝るしか能がないのか！二度と私の前に現れるな！」



部屋の扉が大きな音を立てて乱暴に閉じられる。私はまた、お父様を怒らせてしまった。
静かになった部屋に一人静かに縮こまる。


お父様は有名な企業の社長で、双子の姉の花音と二人姉妹だ。社長令嬢として様々なマナーや知識を身に着けてきた。でも姉は私よりも優秀でなんでもそつなくこなす人だった。私は姉と比べられてはお父様に怒られる日々。平凡で不出来な妹。これがこの家での私だ。


お母様は私が生まれたころには病気で死んでしまった。



「きゃっ……！」


「今あなた花音に足かけたでしょ⁉自分の姉にそんなことするなんて信じらんない！」


「ちがっ…私じゃな……」


「私が悪いのよ。謝るわ……だからこんなことしないで乙葉！」



学園では花音とすれ違うたびに私がいじめてきたように見せられる。
もはや否定することさえ疲れた。





――私は独りぼっちだった。




「あんたは余計なことをしないで、そこにいればいいの。わかるわよね？」


「……はい」


「お父様に報告されたくないんだったら、反発なんて馬鹿なことしないことね」



学園では悪女としての立ち回りをすることが私の役目。それ以上も以下も何も求められていない。
私はお父様も花音のことも家族だなんて思ったことは無い。ただただ利用して、自分の都合のいいように何でもかんでもしたいだけなんだから。


人なんて信じるものじゃない。何を考えているかなんてわからない。


誰とも関わらない学校生活を過ごすことも別に嫌だとかそんな感情があるわけでもない。
それでいいの。もう何もしたくない。考えたくない。