Simple-lover(シナリオ版)



⚪︎主人公、陽菜(17歳、高校2年生)自宅、夏休みの昼間。
ヒナの両親が旅行で不在の中、リビングで二人きりの陽菜と裕紀(大学1年生)。
ソファに座ってのんびりスマホゲームをしている所に、ワンピースに着替えた陽菜が登場。


陽菜「ヒロにぃー!見てみて!」
裕紀「…はぁ?お前バカじゃないの。何だよ、その格好は。」
陽菜「え…?新しいワンピだけど。明日、クラスの何人かと出掛けるから新しいワンピースを買ったんだ。」
裕紀「クラスの何人かで出掛けるのに肩も足も丸出しの服なんて来てくんだ。何?何かのエサにでもなりに行くの?私を食べてくださーい!って?」
陽菜「…何それ。」
裕紀「男は皆、その気になんだよ、そんな格好してりゃ。」
ふいっと顔をそらして、そっけなく、スマホに視線を落とす裕紀。
何となく悲しくなる陽菜。
(「…ただ、可愛いって言って欲しかっただけなのに。
それ以上、ヒロにぃに望んでも仕方ないから、親友のなつみが「よし!皆でどっか出掛けて、彼氏作ろう!」と、手をさしのべてくれて…頑張っておしゃれして出掛けようとしてるのに。」と心の中で思う。)


陽菜「……ヒロにぃのバカ!嫌い!」
捨て台詞を吐き、口を聞くまいと部屋に閉じ籠る陽菜。


ー約30分後ー

⚪︎陽菜の部屋の前ドア越し
裕紀が陽菜の部屋のドアをノック。

裕紀「ヒナ、買ってきたレインボーアイス食う?」

部屋の中で、そんな手に引っ掛からないもん!と思い膨れっ面で、ドアを一瞥し、フンと他所を向く陽菜。

陽菜「いらない!」
裕紀「…へぇー。いらないんだ。今夏限定、しかも数量限定の7色の虹色アイスが買えたのになー。そう、いらないのね。」
陽菜「………。」
裕紀「ま、俺が頂きますからいいんですけどね。」
陽菜「……………。」
裕紀「あー。残念。旨そうなのにねー。」

裕紀の足音がが去って行く。それにたまらなく不安になる陽菜。
思わず、ドアを開ける。

陽菜「ま、待って…」

途端に裕紀がグンとそのまま勢いよくドアを開け、その反動で陽菜は体制を崩す。よろけた陽菜の体を裕紀が捕らえる。


⚪︎陽菜の部屋


裕紀「はい、捕獲ー。」

裕紀が後ろ手にパタンと開いていたドアを閉める。

陽菜「な、何で?だってドアの前から居なくなる音が…」

ぎゅーっと陽菜を抱き締めたまま、優しく笑う裕紀。

裕紀「…何年お前と居ると思ってんだよ。どうせ、俺の気配が消えりゃ、不安になって出てくんだろ?
しかも、アイスのオマケ付きだし。
足音消して潜んでたに決まってんじゃん。ヒナの行動なんてお見通し。」

陽菜の耳裏に裕紀の柔らかい唇が触れる。

陽菜「…べ、別に不安になってないもん。ただ、限定アイスが食べたかっただけだもん。」
裕紀「そ?じゃあ、帰ろっかな、俺は。」

裕紀は変わらず陽奈を抱き締め、陽奈も裕紀の背中に腕を回して、ぎゅーっと抱き締める。

裕紀「…ヒナ。このワンピースは誰の為に着んの?」
陽菜「…………。」
裕紀「ヒナ?」

陽菜、何も言わずにただ顔を裕紀の胸元に埋めている。
陽菜の髪にスラッとしている裕紀の指が通される。

裕紀「言っとくけど、答え間違えたらただじゃおかない。」
掠れた小声でそう耳元で話す裕紀。

裕紀「あー…まぁ、当たっても結果は同じか。」

煩いほどに心音が高鳴っている陽奈。一方で裕紀の声色は冷静。
次の瞬間、陽奈の首筋にチクリと痛みが走る。
陽菜驚き、戸惑う。
陽菜「っな、何…?」
同時に体がベッドに横たわる。
陽菜は相変わらず戸惑いの表情を見せている。そんな陽菜を裕紀が見下ろし、覆い被さる。

裕紀「…貰ってい?」
陽菜「な、何…を?」
裕紀「『何を?』って。」
裕紀、笑いながら、おでこ同士をコツンとつけて、鼻を擦り合わせる。
両手はお互いの指同士が絡められてシーツに少し沈んでいる。

裕紀「…つかさ。元々お前は俺のでしょ?」
陽菜「な、何言って…んんっ」

陽菜が言葉を発し始めた瞬間、裕紀が唇で陽菜の唇を塞ぐ。
離す瞬間にチュッと少しリップ音が響く。

裕紀「人が色々気を遣ってね?手を出さないでいてあげたわけよ。それなのにさ…。
色気放つ相手、間違えてんじゃないよ。」

そこから先は、ただ、ひたすらに繰り返されるキス。
互いの唇は湿り気を帯びて、それでも止まない。

その最中、陽菜は、裕紀の言葉が脳裏に浮かぶ。
『男は皆、その気になんだよ、そんな格好してりゃ』

心の中で、「…ヒロにぃも?私のワンピース姿に?」と思う陽菜。
陽菜が、絡めている両手の指に力を込める。

裕紀「…ヒナ」
呟く様に囁かれて見た裕紀は、煌めきの多い瞳が少し乱れた前髪から覗き色気を放つ。
ごくりと思わず目を見開き喉を鳴らす陽菜。

「…いくら鈍いとは言え、この先何が起こるのか位はわかってる。」と心の中で思う陽菜。
「経験は…無いけど。」と。

次の瞬間、陽菜の両足の間に裕紀の脚が割り込んで内腿を擦り上げる。

陽菜「ひ、ヒロに…っ!」

陽菜の首筋に再び裕紀の唇の柔らかさが降って来て、陽菜の体が強ばる。
オフショルダーのワンピースの肩は、裕紀の頬に下げられて、胸元が露になる。

裕紀「すーぐ下がんな、これ。」
露わになった胸元にもまた裕紀の唇が何度も、何度も触れる。
触れた後には、沢山紅い痕が咲いている。

裕紀「あーあ。これじゃあ、もう明日は露出度高いものは着れないね。特にこのワンピース。」
陽菜「っ…。」

柔らかい口角をキュッとあげた満足げな笑顔を陽菜に向ける裕紀。

陽菜「…いいもん。着ないから。」

陽菜が負けじと言いうと、裕紀が、フッと笑っておでこ同士をコツンとつける。

裕紀「よく答えをおわかりで。」

尖らせた陽菜の唇にチュッと軽くその唇で触れる裕紀。

裕紀「…そう言う顔してんと続きするけど。」
陽菜「やだ。」
裕紀「うっさい。手遅れ。」

⚪︎陽菜の心うち
(「…初めて、男の人を知った。
ヒロにぃの今まで見たことの無い表情を見た。
そんな
ひと夏のハジメテは)


裕紀「ヒナ…好き。」
少し汗ばみながらも、優しく柔らかい表情で陽菜を抱きしめる裕紀。
そっとキスをする。

⚪︎陽奈の心うち
(ヒロにぃの囁きと温もりで目一杯満たされた。)




⚪︎数週間後の夏休み昼間。
再び、両親不在の陽奈自宅リビングで、裕紀がソファに座りスマホゲームをしながら過ごしていると、陽奈が水着姿で登場。

裕紀「…で?何で今度は水着?しかも、ビキニって。」
陽奈「海に行く事になったの!似合う?」
裕紀「………。」
「こいつ全然わかってねえ」と呆れ、みている裕紀。

※この後、ヒナがどうなったかは、言うまでもない。(ワンピースの時とほぼ同じことが繰り返されるであろう)



<ここから裕紀(ヒロキ)目線>


陽菜と俺は、それこそ…陽菜が生まれた頃から一緒だった。
隣同士の家で、親同士が意気投合。
よく、お互いの家を行き来していたから、赤ちゃんの頃から陽菜と一緒にいることが多かった。

ー裕紀回想ー

○裕紀幼少期、陽菜赤ちゃん
陽菜母「裕紀君が居るとずっとご機嫌なのよね、陽菜。」
陽菜父「いつも遊んでくれてありとうな!」
裕紀、2歳。陽菜の両親にそう言われ、嬉しそうに笑う。

○陽菜が成長する姿
陽菜、生後数ヶ月。ベビーベッドで泣いている陽菜に裕紀がそっと近づき、陽菜に話しかけると泣き止み笑う。裕紀はそれに「わあ」と嬉しそうにする。
陽菜、ハイハイで、裕紀を追いかける。
陽菜、よちよち歩きで裕紀に向かって手を広げて「うー!」と言いながら寄ってくる。

初めてそういう、「純真無垢に自分を好き」という存在に出会った裕紀は幼心に『嬉しい』と素直に思う。

陽菜が成長していく過程
一緒に家の中で遊ぶ姿
二人で座って絵本を読む。
陽菜が笑うと、嬉しくて、おもちゃをあげたり、撫でたり…ってことから始まって、友達と遊ぶのとはまた違う感覚で、一緒にいることが楽しみになっていく。

○陽菜3歳 裕紀5歳
遊園地や公園に行く道すがら
陽菜母「ほら、ヒナ、手を繋ごう?」
陽菜「やだ!ヒロにいとててつなぐ!」
陽菜母「ヒロくんだって、手を繋いでたら大変だから…ね?」
陽菜「やら〜!ヒロにいがいい!」

駄々をこねる陽菜を見て、少し照れながらも「ん」と手のひらを差し出す裕紀。

陽菜母「ヒロくん、ごめんね?なるべく車が通らない所を通ろうね」
裕紀「うん…」
裕紀母「お、ヒロ〜!ヒナちゃんに優しくしてかっこいいよ!」

陽菜母、裕紀母が、前後に居て見守ってくれている中、二人で歩く。
裕紀心の中で「やっぱりヒナは俺が面倒見てやんないとだよな。」そう思いながら、ニコニコ顔で歩くヒナに微笑む。

○裕紀、陽菜小学生

夜、食事を一緒に食べるべく、陽菜の家を両親と訪れると、「ヒロにい!」と目を輝かせて、走ってくる陽菜。
その後ろから、陽菜の両親も「いらっしゃい」と笑顔で顔を出す。

年齢が高学年になっても、陽菜は裕紀が来ると嬉しそうに出迎える。
そんなことが続いて、どんどん居心地が良くなり、会いに行く頻度が増えていった裕紀。

嫌なことがあっても、陽菜に会うと気持ちが軽くなって…成長するにつれて、会いたいって思うことが増えていく。

○現代の裕紀、改めて考えたこと

…陽菜に恋愛感情抱いたのがいつ頃かなんて、そんなの改めて自覚するまでもない。
だって、陽菜は俺にとっては、ずっと可愛いままだし、その想いは変わらない。
けど…まあ、10代の2歳は大きいわけで。
俺のが、先に中学生になって、高校生になって…って大人になってく。
当然人間関係が広がっていって、色恋沙汰にも足を突っ込んで行く環境になるわけで。

そりゃ、俺だって普通の男子なんで。
いわゆる思春期の見栄とか考え方とか、色々持つし、そもそも、2歳下の小学生だの中学生だのが好きって周りに知られたらやばいよねなんて、考えとか、色んな変な思考が相まって、他の子と付き合ってみたりもしたし…それに伴う色々もあったけど。

まあ…続かないよね。当たり前だけど。
だって、根底で求めてるのはヒナなんだから。

もちろん、付き合っている間は、ちゃんと相手を大事にするし自分なりに頑張ってるつもりだったけど。
結局そう言うのって、相手に伝わる。

○裕紀中学時代
元彼女「ヒロって、私のこと好きじゃないよね」
裕紀「や、そういうわけじゃ…」
元彼女「もういいって。大体、日曜日に会えないとかさ、クリスマスはだめとかさ…。冷めるってば!」

そう言って立ち去っていく彼女の背中を深いため息をつきながら見送る裕紀。

裕紀心の中で(『彼女が居ても、結局週末にはヒナに会いに行ってたんだから、そりゃそうか』って今は思うけど。)

○裕紀高校生
元彼女「ヒロ、なんで週末はことごとくダメなわけ!」
裕紀「や…うん。ごめん。用事があってさ。」
元彼女「はあ?!毎週用事って何なのよ!どうせ幼馴染でしょ!」
裕紀「…どうせってなんだよ。俺にとっての大事を勝手に計らないでよ」
元彼女「っ!もういい!さよなら!」

裕紀、立ち去っていく彼女をまたも見送り、ため息。

裕紀、心の中『もう…待つしかないよな、口説いて良い歳まで。高校卒業した後なら、大人だし自由でしょ。』

なんて…思っていた矢先。

○現在、陽菜の家のリビング、二人きり。

陽菜「ヒロにい、見て!可愛い?!」
陽菜、ニッコニコ顔で現れ、『いかにも』って感じのミニ丈のワンピースで登場。
陽菜「今度、高校の友達とか皆で出かけるの!」

裕紀心の中『いや…待ってよ。俺が散々我慢して、待ってんのに違う男に口説かれに行くわけ?』

裕紀「…お前バカじゃないの。何だよ、その格好は。」
陽奈「え…?新しいワンピだけど。明日、クラスの何人かと出掛けるから新しいワンピースを買ったんだ。」
裕紀「クラスの何人かで出掛けるのに肩も足も丸出しの服なんて来てくんだ。何?何かのエサにでもなりに行くの?私を食べてくださーい!って?」
陽奈「…何それ。」
裕紀「男は皆、その気になんだよ、そんな格好してりゃ。」

裕紀そっけなく、言い放ちそっぽをむく。

○裕紀心のうち
勝手に待ってたくせに、その矛先をヒナに向けて…「お前が好きなのは俺だろうが」なんて、身勝手極まりない独占欲。
自分でも、呆れるほど自分が歪んでんなーって思った。
でも…ね。

○陽菜の部屋にて
裕紀が抱きしめると、陽菜も裕紀を抱きしめる。
裕紀心の中『もう、我慢は無理だな』
『ここから先は…今まで以上に大切にする。絶対。
陽菜が俺と居てくれる未来が続くように……。』






『転機』ここまで