「何だ、このタオル知ってるってことは、希沙、俺のファンか。」
そう言いながら、作業部屋に入りドアを閉める千景。
「このタオルって、"シャドウ4C"が投稿された時に抽選販売されたタオルだよね?わたし、"シャドウ4C"大好きでさぁ!このニコ丸のロゴも可愛いし、応募したんだけどダメだったんだよねぇ〜。」
"シャドウ4C"とは、カゲが投稿する曲の中でも上位にあたる程、人気のある曲で、"ニコ丸"とは、片目が☓になった白黒のニコちゃんマークでカゲのアカウントのアイコンになっているキャラの名前だ。
千景は「ガチファンじゃん。」と言ってわたしを見る。
わたしはついつい喋り過ぎてしまったことを後悔し、恥ずかしくなってきてしまった。
「まぁ、さっきカラオケでも俺の曲、歌ってたしな。」
「聴いてたの?!聴かないでよ!はっずかしい〜!」
わたしが両手で頬を覆い恥ずかしがっていると、千景はわたしにヘッドホンを差し出してきた。
「え、何?」
「付けて。今から曲流すから、覚えろよ。」
「えぇ?!」
「いいから、早く。」
わたしは仕方なく、ヘッドホンを受け取り、耳に被せた。
すると、聴いたことのない曲が流れ出した。
切なげで、でもポップで勢いのある曲調。
メロディーラインが流れ始め、わたしは目を閉じて曲に聴き入った。



