「え、真っ暗なんだけど、、、。」
わたしがそう言うと、千景は玄関に入り「基本的には作業部屋にしか居ないから、カーテンを開けることがないだけだ。」と言い、「中入ったら鍵締めて。」と言って靴を脱いだ。
「うん。」
わたしは中に入り、ドアを閉めた。
すると、本当に真っ暗で何も見えず、手探りで玄関のドアの鍵を締めた。
「えぇ、ちょっと、真っ暗で何も見えないんだけど。どこ?どっち?」
とりあえず靴を脱ぎ、壁伝いに歩こうと手を伸ばすと、温かく大きな手がわたしの手を包んだ。
「こっちだ。」
千景に手を引かれ、ドキッとしてしまうわたし。
少し歩くと千景が止まった気配がして、わたしも立ち止まる。
そして、「ここが俺の作業部屋だ。」と開いたドアの隙間から光が差し込み、やっと視界が開けた。
中を覗いてみると、その部屋には音楽を作るに必要な機材が全て揃っているのではないかという程、たくさんの機材やパソコンが並んでおり、アコースティックギターが立て掛けられていて、よくテレビやYouT◯beで見掛けるレコーディング用のマイクまで取り揃えられていた。
この部屋は明るいが、電気の明かりであってカーテンは閉め切られている。
わたしは部屋に足を一歩踏み入れると、壁に飾られたタオルを見て、確信した。
「あ!カゲのオリジナルタオル!」
ある時期に10枚限定で抽選販売されたオリジナルタオル。
わたしも応募したのだが、見事に落選してしまったのだった。



