シャドウ4C


「千景って、随分良い車乗ってるけど、何の仕事してるの?」

わたしがそう訊くと、千景はぶっきらぼうに「音楽関係。」と答えた。

「音楽関係?」
「うん。まぁ、一応そこそこ名は知られるようになってきたかな。」
「え?何て名前で歌出してるの?」
「"カゲ"。」
「えぇー?!あ、あのカゲ?!YouT◯beでボカロ曲投稿してる、あのカゲ?!」

わたしのあまりの興奮に千景は「うるせーなぁ。」と顔をしかめた。

「本当なの?!」
「本当なのかは、家に着けば分かる。」

千景はそう言い、車を走らせ続け、ある大きなマンションの駐車場へと入って行き、車を停めた。

「着いたぞ。」
「このマンション?めっちゃ立派。」

そう言って、千景の車を降りる。

何も言わず歩き出す千景について行くわたしは、好奇心と緊張で周りをキョロキョロしながら歩いた。

そして、辿り着いたのはマンションの10階。

エレベーターを降り、千景は一番端っこの部屋まで歩いて行くと、1001号室の前で立ち止まり鍵を開けた。

千景はドアノブに手を掛け、開いた扉の向こう側は真っ暗で光が遮断された闇のようだった。