高校に進学すると、人間関係が苦手なわたしだけど、何とか周りの流行りについていこうと必死で、上辺だけの友達を作り、一緒にカラオケに行ったりした。
そのうち、友達に「希沙って、歌上手いよね!」と言われ、それが嬉しくて歌うことが好きになった。
学祭では、先生と友達に背中を押され、ステージの上で一人、宇多◯ヒカルの"First L◯ve"を歌った。
すると、歌い終わった後にたくさんの歓声と拍手をもらい、あの時の達成感のような"わたしにも認めてもらえるものがあった"という喜びが忘れられず、わたしは歌を歌い続けるようになった。
それから音楽番組を見る機会が増え、テレビの中で歌う人たちに憧れを抱くようになった。
音楽系の雑誌を買うと、"新人歌手オーディション"の広告を見つけ、わたしは受けてみたいと思った。
わたしは母にオーディションを受けたいと言うことが恥ずかしかったが、勇気を出して「お母さん、わたし、、、このオーディション受けてみたい。」と伝えた。
母は、わたしが差し出したオーディションの広告を見ると、「新人歌手?あんた、簡単に考えてない?こうゆう世界は、そんな甘いもんじゃないのよ?」と言った。
「わかってるよ!でも、受けてみたいの!」
「やめときなさい。どうせ受からないから。」
そう言われ、母はわたしが差し出したオーディションの広告をゴミ箱に捨てた。
母はいつもそうだ。
わたしがやりたい事はやらせてくれない。
自分の考えだけで反対して、わたしの気持ちは無視。
わたしは何の取り柄もないわたしのまま。
ただ、歌が好きなだけの子どもが成長して、何にも変わらずに大人になった。



