部屋のドアがノックされ、扉が開く。
入って来たのは、背の高い男性だった。
ちょい長めの黒髪にはツイストパーマがかかっていて、ダボッと着た黒いパーカーにカーゴパンツ。
そして、両耳と鼻にピアス。
スタッフの人、、、では、なさそうだね。
「あ、あのぉ、、、」
わたしがそう言うと、その男性はドア付近のソファーに腰を掛け、タッチパネルに手を伸ばすと、今歌い掛けていた"アイ◯カタチ"を最初から演奏にした。
「歌って。」
そう言って、足を組み腕を組んでテレビ画面に視線を移す男性。
何この人、、、
めっちゃ偉そうだし、何なの?
わたしはそう思いながらも、曲が始まると歌い出した。
その男性は、最初から最後まで微動だにせず、わたしの歌を聴いていた。
そして歌い終わると、その男性は立ち上がり、「ここ俺払うから、店出るぞ。」と言い、伝票を持ち出して行った。
「え!えぇ?!まだあと時間余ってるんだけど!」
そう言いながら、わたしはバッグを抱え、慌ててその男性を追った。
しかし、追いついた時には既に会計済みで、その男性はわたしの方を向くと「ついて来て。」だけ言って、お店を出たのだった。



