シャドウ4C


何度か聴かせてもらったあと、曲が止まり、わたしは目を開く。

すると、千景は1枚の紙をわたしに差し出した。

「何?」

そう言って受け取ったその紙には、手書きで書かれた歌詞たちが並べられていた。

何度も書き直した跡があったり、乱雑に書かれている部分があったりするが、まぁ、読めなくはない。

「メロディーに乗せて歌ってみて。練習時間やるから。」

そう言って、千景は再び曲を流し始め、わたしは歌詞を見ながら、最初は戸惑いながらも少しずつメロディーへの歌詞の乗せ方が分かってきて、何と無く歌えるようになってきた。

何と無く歌えるようになってくると、千景のチェックが入る。

「ここは伸ばして」とか「1回ここで止めて」とか、細かい指摘通りにわたしは歌っていった。

どのくらいの時間が経ったのか分からないが、ある程度歌えるようになると、千景は「よし、一度録ってみるか。」と言った。

「え?!録るって?!」
「レコーディングのこと。」
「嘘でしょ?!」
「んな嘘ついてどーすんだよ。ほら、ヘッドホンしてマイクの前立って。」
「え、えぇ?!」
「早く。」

わたしがあたふたしていると、千景は「自分の曲だと思え。」とわたしに言った。

自分の曲、、、

わたしは一度、歌詞が書いている紙に視線を落とし、落ち着いて歌詞を読んでみると、自分と重なる部分があり、ふと自分の中に歌詞が落とし込めた気がした。

そして、ヘッドホンをしてマイクの前に立つ。

わたしが深呼吸し終えるのを確認すると、千景は「いくぞ。」と言い、スイッチを入れた。