何度か聴かせてもらったあと、曲が止まり、わたしは目を開く。
すると、千景は1枚の紙をわたしに差し出した。
「何?」
そう言って受け取ったその紙には、手書きで書かれた歌詞たちが並べられていた。
何度も書き直した跡があったり、乱雑に書かれている部分があったりするが、まぁ、読めなくはない。
「メロディーに乗せて歌ってみて。練習時間やるから。」
そう言って、千景は再び曲を流し始め、わたしは歌詞を見ながら、最初は戸惑いながらも少しずつメロディーへの歌詞の乗せ方が分かってきて、何と無く歌えるようになってきた。
何と無く歌えるようになってくると、千景のチェックが入る。
「ここは伸ばして」とか「1回ここで止めて」とか、細かい指摘通りにわたしは歌っていった。
どのくらいの時間が経ったのか分からないが、ある程度歌えるようになると、千景は「よし、一度録ってみるか。」と言った。
「え?!録るって?!」
「レコーディングのこと。」
「嘘でしょ?!」
「んな嘘ついてどーすんだよ。ほら、ヘッドホンしてマイクの前立って。」
「え、えぇ?!」
「早く。」
わたしがあたふたしていると、千景は「自分の曲だと思え。」とわたしに言った。
自分の曲、、、
わたしは一度、歌詞が書いている紙に視線を落とし、落ち着いて歌詞を読んでみると、自分と重なる部分があり、ふと自分の中に歌詞が落とし込めた気がした。
そして、ヘッドホンをしてマイクの前に立つ。
わたしが深呼吸し終えるのを確認すると、千景は「いくぞ。」と言い、スイッチを入れた。



